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ラインハルトに欠点はあるのか?

帝国キャラ編

ラインハルトは、その外見の完璧な造形とあいまって、欠点を持たない、完全無欠な人間であるかのように思えるが、一概にそうともいえないところがある。

彼には明かに変に意固地で子供っぽいところがある。それが顕著なのが、キルヒアイスとの関係においてである。どうやら、「キルヒアイスなら絶対、自分のことを理解してくれる」という揺るぎない信頼感というか、勝手な強い思い込みがあるせいか、自分ならわがままも許してもらえるという甘えに似た感情もあるようだ。

「お前は優しい。だけど言っておく。お前は姉上とおれにだけ優しければいいんだ。他の奴にそんな態度をとってやる必要はないんだぞ」(外伝1巻)

こんなラインハルトの言葉には、自分なら親友に対して友情の独占を要求することも許されるという強い甘えが含まれている。

キルヒアイスは、ラインハルトと共に歩むようになって以来、苦労性になってしまったという。この理由は、彼がラインハルトの補佐役に徹するだけでなく、同時に、彼を脇から温かく見守ってやるという、一種の精神的年長者の役割も果たしていたからではないか。

もちろん、ラインハルトとしては、自分が親友にわずかでも心理的に依存したくないので、そのような場面に気づかされた時は、ごまかすしかなかったようだ。

この一事をもっても、ラインハルトが容姿や才能の点でいかに完全を誇っていても、性格的にはどこか幼い、いや純粋すぎる側面もあったことをうかがわせる。

そして、こういった彼の性格というものは、終生、変わらなかったようだ。

時には異常なまでの誇り高さが転じて、ほとんど子供じみた様相にすら映る事例もある。 典型的なのが、バーミリオン会戦の時である。

ヤン艦隊の砲列が目前に迫った時、ラインハルトは脱出を促すシュトライトの散々の諫言にも関わらず、決して戦場を離脱しようとはしなかった。

「出すぎたまねをするな。私は必要のない時に逃亡する戦法を、誰からも学ばなかった。 卑怯者が最後の勝利者になった例があるか!」(0VA52話)

「ここでャン・ウェンリーを恐れて逃げたとなれば、私に敗れて死んだ者たちが何が宇宙 の覇者かと、ヴァルハラや地獄で私を嘲笑することになるだろう。卿らは私を笑い者にし たいのか?」(同)

ラインハルトはこのように部下の諫言を一蹴した。

こういう子供じみているとも思える意固地さには、部下もホトホト困ったに違いない。

そして、この会戦が、同盟政府による停戦命令によって終結した事情を知ると、ラインハルトは次のような自嘲に満ちた述懐をする。

「私は勝利を譲られた、というわけか。情けない話だな。私は本来自分のものではない勝利を譲ってもらったのか。まるで乞食のように」(OVA53話)

この時の経験はラインハルトの務持をいたく傷つけたようだ。

だから、彼は後に「回廊の戦い」で、自ら築き上げた戦略的優位に乗ずることなく、あえてヤンに正面決戦を挑み、戦術的勝利をものにすることに固執した。(*1)

はっきり言って、ハイネセンを脱出してイゼルローンに籠もったヤン一党など、回廊の両端を封鎖して放置しておくだけで、戦わずして無力化できるのだ。

だが、ラインハルトはそういう勝ち方を受容できなかった。

彼は史上無比な戦略家でありながら、一方で、戦場で敵と正々堂々と戦って勝利することにこだわる「戦士の務持」の持ち主でもあったのだ。

つまり、ラインハルトは政治構想家であると同時に、剣に生きる一戦士でもあった。

彼はだから、彼は「どうせなら対等の戦略的条件であの魔術師と渡り合ってみたいものだが」(OVA77話)などと言い、この時ばかりは、将兵を無駄に死なせるという自覚すら失ってしまったのだ。

ヤンの計報に接した時、ラインハルトは「余はあの男に余以外の者に倒される権利など与えた覚えはない!」(OVA84話)などと無茶苦茶なセリフを叫んだ。

これなどは悲しみの反面、要するに自分は何がなんでもヤンに勝ちたかった、いや、ヤンに負けた自分を認めることができなかったという、そういう悔しい気持ちの表れでもあったように思われる。

「軍神と美神とが名誉と情熱をかけて所有を争うような、この比類ない若者は、負けるこ とよりも負けたと言われることのほうを恐れているようであった」(第7巻)という。

このような非常に子供っぽい性質は、ラインハルトの本質の一つでもある。それが顕著に表れているのが姉との関係においてである。

ルビンスキーなどは、この点を、彼なりの解釈で、次のように看破している。

「グリューネワルト大公妃が害されるようなことがあれば、カイザーは逆上する。英雄も名君も消え去って、激情家の小僧だけが残る」(OVA76話)

事実、オフレッサーがレンテンベルク要塞戦でアンネローゼを侮辱した時や、幼帝誘拐のためにオーディンに侵入したランズベルク伯の目的がアンネローゼを害することではない かと疑った時などは、ラインハルトは感情を剥き出しにして激怒している。(*2)

これを欠点と言い切るのも短絡だが(むしろ怒らない方が人間的に異常だが)、姉のこととなると途端に冷静さを失うというのは、たしかに大軍の司令官としてはマイナスに作用する要素である。

オーベルシュタインなどからすれば、これは容認できない「甘さ」であろう。

ラインハルトは、非常に生真面目で純粋な人柄の持ち主である。だが、それが度を越している部分もあるため、意固地で頑固、かつ子供っぽくで世慣れしないという感じがしないでもない。彼の性格的な長所が、別の視点から見ると短所にみえてくるのも、人間という生き物の複雑さゆえかもしれない。

*1・この出来事は、後にオーベルシュタインによって「そのカイザーの誇りが、イゼルローン回廊に数百万将兵の白骨を朽ちさせる結果を生んだ」(OVA103話)と厳しく批判された。

*2・ロイエンタールはオフレッサーに激怒した彼を見て、「ローエングラム侯もまた感情に支配される人間だということだ」(OVA20話)と感想を漏らしている。

ラインハルトと帝国軍の諸将たち――名提督列伝

帝国キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-63

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