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【銀英伝】大義を掲げての無謀な帝国領侵攻【後編 歴史ネタ】

歴史ネタ編

そういえば、第二次大戦中の日本帝国もまた「アジアの解放」という「大義名分」を掲げて、東南アジアの欧米植民地に侵攻したことがある。

大東亜戦争に関しては、複雑で多角的な評価が必要であり、そういう解放としての側面がまったく無かったわけではない。たとえば、フランスの植民地だったベトナム・カンボジア・ラオスなどは、大戦中に日本軍が現に「独立」させている。ただ、動機のかなりが対連合軍戦の長期化に備えた資源確保であったことも事実である。

実際、現地では物資・労働力の徴発を行い、反感をかった。

さて、白由惑星同盟建国以来初の帝国領侵攻は、ビュコック中将(当時)に「いきあたばったり」と評されるほど、お粗末な作戦に拠っていた。

立案したのはフォーク准将という、士官学校を首席で卒業した秀才であった。

だが、侵攻の戦略的意味は暖味であり、「帝国の人間どもの心胆を寒からしめる」だの「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する」だのと、具体性・実効性に欠くこと甚だしい作戦であった。

この希望的観測に寄りかかった投機的軍事行動と、補給・情報収集の軽視という同盟軍の失敗は、先の大戦での日本人にとっても決して他人ごとではない。

1944年3月、日本陸軍史上、最遠隔地への侵攻が行われた。

「インパール作戦」である。

先の大戦で日本軍は数々の失敗を重ねたが、この作戦も極め付きであった。

そもそもこの作戦は、牟田口中将(*5)の個人的熱意に突き動かされて大本営が認可したものであるが、当初から戦略的に疑問視されていた。

日本軍はビルマ国境で大攻勢をかけ、インパール攻略を目指したか、制空権もないまま3千メートル級のアラカン山脈を、牛や人力に頼って行軍し、たちまち武器弾薬・食糧の補給に支障をきたしてしまった。

対する英軍は、空輸で補給しつつ強力に反撃する。

結局、日本軍は撤退を余儀なくされるが、補給がないため、食糧も医薬品も皆無に近い状態だった。そのため日本軍は、マラリア、赤病、栄養失調などで餓死者・病死者が続出するという悲惨な状況を迎え、戦死傷者7万人以上を出して敗退した。

さて、『銀英伝』に戻ろう。

ヤンはかなり早い時期からラインハルトの作戦を看破していた。

「敵は焦土作戦に出て、われわれが飢えるのを持っています。このままでは、われわれはロシアに出兵して敗北したナポレオンの二の舞いになるのは明白です」(OVA14話)

帝国領への遠征が自由感星同盟の崩壊の序曲となったように、ナポレオンのフランス帝国を瓦解させたのは「モスクワへの遠征」だったといわれる。

ナポレオンはその全盛期にヨーロッパの大半を支配したが、イギリスだけは断固として屈服しなかった。そこでナポレオンは、1806年の大陸封鎖令によって大陸諸国とイギリスとの貿易を禁じて、イギリスへの経済的圧迫をはかる。

だが、ロシアのアレクサンドル二世はこれを破った。

仏露両国の交渉が失敗に終わると、1812年、ナポレオンは約50万の大軍を率いてロシアに遠征した。

この時にロシアが取ったのが「焦土作戦」である。

ロシア軍は、村を焼き払い、物資を徴発し、橋を壊して、ゆっくりと後退した。

6月にロシア国境に侵入したナポレオン軍は、当初から酷暑と悪路に悩まされ、早くも脱落者が続出した。

9月にモスクワの手前で大会戦(*6)が行われると、ロシア軍はモスクワの放棄をも決定。ナポレオンが入城して来たところで火を放ち、建物を焼き払った。

10月に入り、冬の到来を危惧したナポレオンは撤退を決意。

だが、コサック兵による執拗な追撃と補給路や退路の遮断、冬将軍の到来などで、ナポレオンの軍勢はまるで葬列と化し、帰還兵はわずか5千名ほどだったという。

ナポレオンの帝国は、この大敗により一挙に崩壊の坂道を転げ落ちていった。

この「焦土作戦」は、広い国土そのものを利用したロシア得意の戦法で、このナポレオン戦争の他、北方戦争でも威力を発揮した。

ナポレオンと似た轍を踏んだのがかのヒトラーである。ナチスの「バルバロッサ作戦」も、ロシアの大地そのもの(冬将軍)に阻まれ、失敗に終わった。

ちなみに、日本はそれを見極めずにナチスとの同盟を結ぶ戦略ミスを犯した。

(*5)1888~~1966年。陸軍大学校卒業後、参謀本部に勤務。支那駐屯軍歩兵第一連隊長在職中に「慮溝橋事件」に遭遇し、部隊を投入して戦線拡大のきっかけをつくった。

(*6)モスクワの西120キロのところにあるボロジノの地で、ロシア軍10万とナポレオン軍12万が激戦の末、双方、多数の死傷者を出した。

「銀英伝」には歴史が満ちている――気ままに歴史ネタ探求

歴史ネタ編目次 http://anime-gineiden.com/page-890

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