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【銀英伝】ヤン、政府の謀殺を免れて首都星を脱出する【歴史ネタ】

歴史ネタ編

宇宙暦799年、新帝国暦1年。

終戦の後、ヤンは退役し、長らく待ち望んでいた年金生活に入った。副官であったフレデリカとも結婚し、平穏な新婚生活が始まる。

だが、帝国高等弁務官としてハイネセンに駐在することになったレンネンカンプは、「必ず内心で帝国による支配の転覆を企て長期的な計画を練っているに違いない」(OVA59話)などと、ヤンに対する疑いを捨て切れなかった。

そして、ヤンを陥れようとする一部の同盟権力者たちによる密告を「信じたかった」レンネンカンプは、同盟政府に対して「反和平活動防止法違反」の容疑でヤンを逮捕するように勧告する。

一方、新たに議長となったレベロは、帝国に同盟併呑の口実を与えてはならないと思い込むあまり、歴代政権のブレーンであったオリベイラから吹き込まれたヤンとその部下を抹殺する案を実行しようとする。

しかし、これを察知したシェーンコップらは、逆にレベロを捕まえて人質にし、中央検察庁を襲撃してヤンを救出した。また、ホテル・シャングリラで政務をとるレンネンカンプを急襲して人質にし、ついに惑星ハイネセンを脱出する。

彼らはメルカッツらと合流した後、エル・ファシル独立革命政府に赴き、そこからルッツ艦隊の護るイゼルローン要塞を再び陥落せしめて、要塞に帰還を果たした。

さて、言うまでもないが、これは物語であり、本来、ひたすら歴史の事例に範を求めるのは、作者の創造性をも否定しかねないナンセンスの極みである。

ただ、あえてこじつけさせていたたくなら、少なくとも私が思い浮かぶのは、かの『水滸伝』(*1)である。そう、歴史というよりは「歴史的小説」だ。

この『水滸伝』の中に、豪傑の一人・林冲が梁山泊にたどり着くエピソードがある。

物語の舞台は宋の時代。80万近衛軍の槍術棒術師範・林冲(りんちゅう)は、軍司令官・高求(こうきゅう)の息子の高衙内(こうがない)に妻を岡惚れされたことから、波乱の人生を送る羽目になってしまう。

卑怯な高衙内は、あらゆる陰険な策略を弄して林冲の妻をものにしようとする。そして、ついに林冲を罪人に仕立て上げることに成功。林冲は牢城へ流されることになってしまった。しかも、この道中でも、彼は高求に命じられた護送役人に謀殺されそうになる。

しかし、林冲は、まさに殺されんとしたところを、間一髪で義兄弟の魯智深に助けられた。 ところが林冲は人がいい。護送役人を見逃してやり、あえて牢城にいく。

だが、ここでも暗殺の魔の手がのびてきたのを知り、ついに激怒して暗殺者たちを斬り殺してしまう。こうして指名手配犯となってしまった彼は、知人から紹介された大罪人の巣である「梁山泊」へと上っていき、首領の一人となる・・・。

我ながら強引過ぎる例えだと思うが、実は作者の田中氏が「子供の頃に『水滸伝』を読んでとても興奮した」という趣旨のことをおっしゃっているので(『SFアドベンチャースペシャル・ムック』より)、上記のエピソードが創作者としての原体験に含まれているのではないかと、私が勝手に想像したのである。

もちろん、この時のヤンと林冲の類似点といえば、せいぜい「無実の罪をきせられる」と「謀殺されそうになったところを仲間に助けられる」程度でしかない。

それに林冲は当初、お人よしで控えめな性格として描かれるが、最後にはキレて悪者どもをバタバタと斬り殺すのだ。

これはヤンの性格とは相容れない。この豪傑としての部分を担ったのが、『銀英伝』ではシェーンコップになるのかもしれない。彼も大暴れすることだし・・。

また、林冲の落ち延び先である「梁山泊」であるが、これがどういうわけが私には「ヤン不正規隊(イレギュラーズ)」という不良軍人集団(笑)の根拠地である「イゼルローン要塞」に重なって見えるのだ。

実は、「梁山泊」の盗賊軍事集団である108人の豪傑たちもまた、最後には首脳陣が壊滅してバラバラになり、結局、生き残った者たちはそれぞれの道に散っていく。

この辺りの余韻もまた、なんとなく「伝説後」にユリアンやポプラン、アッテンボローらがそれぞれの人生を歩んでいく様に似ているように思えるのだ。

それに何と言っても『梁山泊』の豪傑たちは「自由」を求める。

「イゼルローン要塞」のヤン・イレギュラーズが求めるものと同じなのだ。

(*1)中国「4大奇書」のひとつ。元末の施耐庵が書き、明代の羅貫中が手を加えたともいわれている。宋江を首領とする盗賊軍団が、山東にある山塞「梁山泊」に立てこもって官軍に抵抗し、後に帰順して地方の賊を討つ物語。反体制・反権力的な内容とされたため、清代にしばしば禁止された。基本は100回本で、毎回、主人公がピンチに陥った時などに「さてさて次回やいかに」と終わってしまい、続に期待をもたせる。

「銀英伝」には歴史が満ちている――気ままに歴史ネタ探求

歴史ネタ編目次 http://anime-gineiden.com/page-890

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