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【銀英伝】魔術師還らず――ヤン・ウェンリー死す【歴史ネタ】

歴史ネタ編

イゼルローン要塞に立てこもったヤン一党を討つため、カイザー・ラインハルトの大親征が行われた。宇宙暦800年、新帝国暦2年4月、「回廊の戦い」が始まる。

この激戦で、ヤン艦隊は艦隊運用の名人であるフィッシャー提督を、また帝国軍はファーレンハイトとシュタインメッツの両上級大将を失った。

一方、戦いの最中にラインハルトが病に倒れた。そして目覚めるなり言う。

「キルヒアイスが諫めにきたのだ。もうこれ以上、ヤン・ウェンリーと争うのはおよしください、と」(OVA82話)。

こうして停戦が実現した。

だが、ラインハルトの待つ帝国艦隊へ会談に向かったヤン・ウェンリーは、その途上、地球教徒の陰謀によって暗殺されてしまう。享年33歳であった。

帝国軍に偽装した暗殺者集団をカモフラージュするために道具にされたのは、かつて帝国領侵攻を立案し、その後に精神病院に収容されていたアンドリュー・フォークであった。

彼を操った地球教徒大主教ド・ヴィリエは、次のように言う。

「古来、暗殺される者は、暗殺されずとも歴史に名を残す。だが、暗殺する者は、暗殺したことによってのみ歴史に名を残す」(OVA78話)

彼らは極度に自己愛の強いフォークの性質をうまく利用したのであった。

たしかに、現実の歴史において、暗殺される側とする側を見てみると、される側は重要人物であるのに対し、する側はいつも取るに足らない人物であるのが事実だ。

しかし、それによって、歴史のほうは大きく流れを変えてしまう。

1914年、オーストリア皇太子で帝位継承者のフランツ・フェルディナントが、セルビア人青年ガヴリロ・プリンツィプに暗殺された(サラエボ事件)

これに対し、オーストリア・ハンガリー帝国は、セルビアに宣戦布告。第1次世界大戦(*1)の勃発である。

1人の暗殺者が歴史に名を残すどころか、歴史そのものを変えてしまったのだ。

また、戦後の著名な暗殺事件としては、1968年の黒人解放運動の指事者であるキング牧師(*2)暗殺の例がある。犯人は白人のジェームズ・アール・レイ。しかし、彼は最近になって犯行を否認しており、政府の陰謀説なども取り沙汰されている。

そして、何と言っても歴史上、もっとも有名な暗殺犯といえば、1963年にダラスでアメリカ第35代大統領のジョン・F・ケネディ(*3)を狙撃したとされるリー・オズワルドだろう。

ただし、オリバー・ストーン監督作・ケヴィン・コスナー主演の映画『JFK』でも暴かれていたように、この事件には不可解な点が多々あり、真犯人は軍産複合体・C1A・マフィアではないかという説も根強くある。

あるいはもっと「上層部」だとも・・(*以下参考サイト)。

ジョン・F・ケネディ暗殺――最後の真実

いずれにせよ、これらの暗殺者に共通しているのは、まったく無名の青年が社会的に重要な人物を暗殺することによって、歴史に名を残したという点であろう。

歴史を動かす要人が、暗殺やテロの標的になる・・・。

残念ながら、これは人類社会に争いや主義主張の違い、信仰の対立などがある限り、これからも繰り返される悲劇に違いない。

(*1) 1914~18年。ドイッ・オーストリアの同盟国と英仏ロシアの協商国との戦いに、世界中の国々が参加した戦争。毒ガス・飛行機・戦車・潜水艦などの新兵器が登場し、戦争の様子が一変した。

(*2) 1929~68年。ジョージア州アトランタ生まれ。非暴力主義による黒人解放運動をすすめる。64年にノーベル平和賞を受賞。ただ、末期には運動が破綻していたという見方もある。彼がなぜ白人から「愛され」て、逆にマルコムXが忌避されたのか、解放運動の本質を示唆しているかもしれない。

(*3) 1917(在61) ~63年。アイルランド系移民で力トリック。父ジョセフは禁酒法時代に大儲けして財をなし、銀行家・駐英大使を務めた。共和党のニクソンと争って僅差で当選、アメリカ最年少の大統領となる。キューバ危機ではフルシチョフと強硬にやり合ってソ連を譲歩させた。暗殺の真相に迫ったものとして、サム&チャック・ジアンカーナ著『アメリカを葬った男』(光文社)や、オリバー・ ストーン監督の『JFK』などがある。

「銀英伝」には歴史が満ちている――気ままに歴史ネタ探求

歴史ネタ編目次 http://anime-gineiden.com/page-890

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