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ヴェスターラント虐殺の経緯とキルヒアイスの怒り

帝国キャラ編

まず、原作版とOVA版では、この事件に対するラインハルトの反応の描き方が違うということを断っておきたい。

原作版では、政治宣伝のために虐殺を黙認すべしとするオーベルシュタインの進言に対して、ラインハルトはあまり躊躇せず、「・・・わかった」と、提案をのんでいる。

それに対して、OVA版では、ラインハルトは艦隊を派遣して攻撃を阻止することにこだわり、黙認の必要性を説くオーベルシュタインと議論になっている。

結局、ラインハルトは「決定はギリギリまで待つ」という具合に判断を曖昧にしてしまい、そこをオーベルシュタインに担がれる格好で、結果的に阻止の機会を逸している。

オーベルシュタインはラインハルトに対して、ヴェスターラントへの攻撃の開始を「6時間後」と報告している。だが、部下のフェルナーに対しては、「強行偵察艦を急行させろ。内密にな。4時間以内に到着させろ」(OVA23話)と命令している。

つまり、攻撃の開始時刻を故意に長目に偽って、ラインハルトを結果的黙認に誘導したということなのだ。

さて、このような原作版とOVA版の相違はともかく(*1)、この「虐殺黙認」には倫理面での問題がつきまとう。

マキアベェリストであるオーベルシュタンが内心で良心の阿責を感じていたか否かは結局のところ不明だが、少なくともラインハルトは感じていた。

まず、最初に道徳面でラインハルトを非難したのは、キルヒアイスであった。

「戦略的にも政略的にもやむをえない手段だったのだ」と自己弁護に終始するラインハル トに対し、キルヒアイスはかつてない強い調子で次のように言った。

「政略のために民衆の犠牲をいとわないというのでは、あのルドルフ・フォン・ゴールデンバウムと何ら変わるところがないではありませんか!」(OVA25話)

だが、この論理には難点がないこともない。

というのも、侵攻してくる同盟軍に対して焦土戦術を用いた時点で、ラインハルト側はすでに民衆を犠牲にしているからである。

同盟軍は、帝国領侵攻の時、約5千万人もの占領地住民を得た(*2)。仮にその内の1%が暴動とそれに対する鎮圧で死亡したとしても、犠牲者は約50万人である。

もちろん手を下したのは同盟軍だが、彼らをその状況に追い込んだのはラインハルト側であり、間接的に民衆を犠牲にしたも同然である。

つまり、ヴェスターラント虐殺を黙認したラインハルトを非難した時にキルヒアイスが用いたロジックは、すでに焦土戦術を用いた時点で破綻しているとも思えなくもない。

もちろん一口に民衆を犠牲にするといっても、その残虐度に大きな差異があるので、2つの事例を単純に同列に置くことができないのも確かだが。

(*1)この辺りの違いは、両メディアの示すラインハルト像に乗離を生じさせかねない危うさもあるかもしれない。この他にも、原作版当初に登場したラインハルトが、皇帝の孫娘2人と形式にせよ結婚する選択まで考慮していたのは、やや驚きである。

(*2)原作版では1億人にまで拡大している。

ラインハルトと帝国軍の諸将たち――名提督列伝

帝国キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-63

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