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自由惑星同盟滅亡後にこそ真価を発揮したヤン・ウェンリー

同盟キャラ編

ヤン・ウェンリーは、ラインハルトとは、まったく異なる立場に立たされていた。

ラインハルトは大な戦略的構想を次々と具現化していくことで常に状況をつくる立場にあったが、対してヤンは、逆にその新しい状況に次々と対応を迫られる側だった。

ラインハルトは、自らの意志でゴールデンバウム王朝を滅ぼし、フェザーン自治領を滅ぼし、そして自由惑星同盟をも併呑して、全宇宙の統一を成し遂げた。

だが、ヤンは、時代的・空間的な制約を受けることなく人類全体の普遍的利益に思いをめぐらす思索力を持ってはいたが、それを具現化しうる権力を持たなかった。

いや、厳密に言えば、手に入れようとさえ思えば、独裁者となれるチャンスは幾度となくあったが、彼は終生それを拒み通した。

結局、ヤンは、あえて一軍人に甘んじ、政治権力を忌避し通したので、ラインハルトのように社会や国家のグランドデザインを行いうる立場には終生なかった。

彼は、権力を手中にすることを個人的なレベルで嫌い、また自分がその柄でもないと考えていたが、何よりも「民主共和制下における軍人」という建前を遵守することに固執した。これは、ヤンのほとんど本能に近い性質でもあったように思う。

ヤンは、「救国軍事会議」によるクーデターを鎮圧する時でさえ、あらかじめビュコック司令に頼んで公式の命令書を手に入れていたくらいだ。

つまり、彼の業績とは、すべて文民コントロール下にある一軍人として行った範囲のものなのである。

それゆえ、彼の業績というと「軍人としての戦術的な成果」が大半である。

ただし、自由惑星同盟が滅亡するまでは。

ヤンがようやく戦略レベルの構想に着手せざるをえなくなったのは、ハイネセン脱出後である。ただし、ここでも彼は、一応、独立を宣言したエル・ファシル革命政府の軍事部門の指導者という体裁にこだわった。

要するに、ヤンは、やはり、名目上はあくまで文民の支配をいただいたのだ。

だが、革命政府の主席であるロムスキーは、人柄はよくても、戦略的な構想に欠ける人物だった。つまり、本来的な意味での政治家(ステイツマン)とは言い難かった。

したがって、ある意味で戦略家としてのヤンの本領が発揮されたのは、彼の人生の最後の局面においてだったといえる。ヤンは、次のように考えた。

専制政治に人類全体の命運をゆだねるわけにはいかない、と。

なぜなら、個人の資質にすべてを託す政治体制では、ラインハルトのような名君の間は人民の幸福が約束されていても、彼の後継者ではそうとは限らないからだ。

ヤン・ウェンリーと同盟軍の仲間たち――イレギュラーズ伝説

同盟キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-366

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