伊達男ポプランに隠された本当の素顔とは?
オリビエ・ポプランの若かりし頃をうかがわせるエピソードがある。
ユリアンやポプランたちが「聖地」地球に侵入した時である。
その時、食事中に突然暴れ出した信者をみて、ポプランはそれが「サイオキシン麻薬」(*)の拒絶反応であることを瞬時に見抜く。
ユリアンにその知識の豊富さを感心されたポプランは、「おれもな、女だけで苦労したわけじゃないからな。青春の苦悩ってやつの、おれは歩く博物館なんだぜ」(OVA63話) などと苦笑いしつつ答えている。
これは、まるで「おれは青春時代にドラッグで苦労した」と口外に言っているようなものではないか。恐ろしい想像だが、もしかしてポプランは、青春時代に一度、サイオキシン麻薬中毒に陥り、人生の地獄や絶望を経験したのではないだろうか。
かつて彼はカリンに対し、ヤン艦隊を指して、家庭的にまともな者がキャゼルス家の子女くらいであるとし、「あとは多かれ少なかれろくでもない環境で育ってんだ」(OVA74話)と語っているが、それは当然、自分も含めてのことであろう。
ポプランもまた少年時代には、家庭的不幸という精神的外傷(トラウマ)を背負っていたのかもしれない。案外、十代の頃の彼は、冗談や軽口とは無縁な陰性タイプの不良少年か、あるいは孤児や家出少年のようなものだったのかもしれない。
ポプランの次のような発言が興味深い。
「平和になったら、退屈極まるが、おれは善良な青少年相手に人生相談室でも開くとしようかと思ってる。人徳あらたかなせいか、おれは年少者に信用があるんでね」(OVA70話)
つまり、悩める青少年の相談相手になってやりたい、ということだ。
これは裏を返せば、自分が青少年時代に苦悩した経験があるので、同じように苦しんでいる若者たちを救ってやりたい、というような意味ではないのだろうか。
「オリビエ・ポプランは、後世、ダスティ・アッテンボローと並んで、イゼルローン共和政府の『陽気なお祭り気分』を代表する存在と目されている」
「ただ、ヤンの時代とちがってユリアンの時代のポプランは、意識してそうふるまおうとする側面が見られた、と、ダスティ・アッテンボローは記す」(第9巻)。
つまり、イゼルローン共和政府時代には、少なくとも陽気さを「演出」していた面もあったということだ。そして、その陽気さは、彼の生来の性格というよりは、そうありたいと願う人生哲学や主義に拠るものではなかったか。
規律破りや軽薄な言動、諸星あたる的ナンパ活動の裏に、そんなポプランの複雑な内面性が隠されているように思えるのだ。
(*)化学合成された麻薬の一種で、とくに催奇性と催幻覚性が著しく強いという(外伝「汚 名」)。その摘発にあたっては帝国と同盟が秘密裏に協力さえしたという。
ヤン・ウェンリーと同盟軍の仲間たち――イレギュラーズ伝説
同盟キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-366
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