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トリューニヒト、その恐るべき軌跡(後半)

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ついに同盟と民主共和政が滅ぶ運命の日がやって来た。

帝国軍がフェザーン回廊を越えて同盟領に侵攻してきた。

ヤンとラインハルトがバーミリオン会戦で死闘を演じている最中、ヒルダの提案をのんだミッターマイヤーとロイエンタールの艦隊がハイネセンを包囲し、同盟政府に対して降伏勧告を行う。この時の評議会で、大勢は降伏の拒否を訴える。

なぜなら、たとえ自分たちが帝国軍の攻撃で殺されても、ヤンがラインハルトを討てば、同盟と民主共和制は救われるからである。

彼らはそこに一途の望みを賭けた。

だが、トリューニヒトは、あっさりと降伏勧告を受諾する。

ここでも地球教徒の手を借りて、反対派を力で抑えた。

おそらく「降伏すれば最高権力者の責任は問わない」という帝国軍の提案も魅力だったのだろう。こうして、次のような歴史の残酷な皮肉が現実のものとなる。

「1億人が1世紀かけて築き上げたものを、たった1人が1日で壊してしまうことができるのですわ」(OVA53話ヒルダ談)

しかし、同盟の命運尽きても、トリューニヒトの命運はまだ尽きなかった。

彼は帝国への移住をカイザーによって認められる。そして、地球教がキュンメル男爵を利用してカイザーの暗殺を謀っていることを、憲兵総監のケスラーに密告する。

おそらく新帝国に対して「貸し」をつくるか、あるいはカイザーの歓心でも買おうとしたのだろう。

ともあれ、彼の政治活動が再始動したのである。

ラインハルトは、官職を要望してきたトリューニヒトに対し、意地悪く「新領土総督府高等参事官」の地位を示す。

だが、ラインハルトの予想に反して彼はこれを承諾し、ついに再びハイネセンの地に降り立った。面の厚さはラインハルトの想像以上だったのだ。

だが、ラインハルトに対する反逆の最中に倒れ、まさにその命の灯が潰えんとしていたロイエンタールの前で、ペラペラとカイザー・ラインハルトに対する軽口を叩いてしまった。(*1)これによってトリューニヒトは、「失敗した反逆者の『暴挙』によって、時空からの退場を余儀なくされたのであった」(第9巻)のである。

以上のように、トリューニヒトはとてつもない政治的生命力の持ち主である。

トリューニヒトは、銀河帝国に立憲体制を確立すべくうごめいていたという。

「ルビンスキーと組んで人脈と金脈を帝国の政官界にじわじわと広げつつあったのだ」(第10巻)

もちろん、それは利己的動機からである。銀河帝国に憲法と議会が整ったら、彼はその機構をフルに利用して政治権力を再び手中に収め、そしてエゴイズムの権化として今度は新帝国全体、すなわち「人類社会全体」を乗っ取ってしまうつもりだったのだ。

これは予想に過ぎないが、もしラインハルト亡き後もトリューニヒトが生きながらえていたとしたら、彼が率いたであろう「立憲派」は帝国内でもかなり勢力を築き上げていたのではないだろうか。

なにしろ、新帝国体制下においては「言論の自由」が保障されているわけだから、政官界に民主主義の原理を吹き込む「啓蒙活動」は、トリューニヒトの知力・財力・詭弁力をもってすれば、容易だったはずである。

しかも、こういう表現はよくないが、帝国民衆は、同盟以上に愚民と思われる。

よって、何年かしたら、彼は新帝国の中に築き上げた立憲派の指導者として、摂政となった皇太后ヒルダの体制に揺さぶりをかけることもできたかもしれない。

そういう意味で、ロイエンタールが「正当な理由なく、ただ感情によってのみ放たれたビームの一閃」でトリューニヒトの一種の「不死性」を破壊したことは、結果的に新帝国の将来の禍の種を取り除いた、ということになるかもしれない。(*2)

トリューニヒトの死は、「カイザーを侮辱したことに対するロイエンタールによる私的暴力の制裁」という、強い偶然性によってもたらされた出来事である。

そして、このような非常手段によってしか社会に対するトリューニヒトの蚕食を止めることができなかったという点に、彼の恐るべき「負の超人性」を感じざるをえないのである。

 

(*1)「~才能はあっても、人間として完成にほど遠い未熟なあの坊やもね」(OVA98話)などと発言。

(*2)ミッターマイヤーの次の言葉はまさにそのことを喝破したものではないか。「カイザーのおんために新領土の大掃除をしていってくれたのだな・・・」。この新領土を「新帝国全体」と呼び変えても当てはまるだろう。

陰謀と詐術と悪徳の世界――負と暗黒の人間像

その他キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-369

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