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銀河帝国の大貴族の陰謀の数々

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この『銀英伝』の物語には「陰謀」が非常に多い。

だが、一口に「陰謀」といっても、それを弄する者の性格によって異なり、様々なタイプに分類できることも事実である。

たとえば、ルビンスキーの場合、悪辣かつ非人間的な面とともに、感情の入らない、知的に計算され尽くした冷徹な現実性をも備えている。

これに対して、地球教の場合は、現実的な効果以上に、嗜虐の傾向と狂気の発露を含んでいる。

そして、オーベルシュタインの場合は、辛辣かつ効率的、また私的感情を消去している分、もっとも理知的・機械的に事を運んでいるといえる。

トリューニヒトの場合は、民主社会の建前上、大っぴらに悪事をやれないせいか、どちらかというと社会の枠内で狡賢く(≒狡智)立ち回ることが多いようだ。

そして、帝国大貴族の場合、「始息・陰険」という表現がぴったりのようだ。

そんな大貴族たちの陰謀の数々を列挙してみよう。

1・ベーネミュンデ侯爵夫人シュザンナ

考えてみれば、この人にも同情すべき余地はある。アンネローゼを寵姫に迎えてからは、皇帝が自分に振り向かなくなった。

その結果、彼女は「あの牝狐がわらわから皇帝を奪った」とアンネローゼを逆恨み。

彼女を貶めることだけが生きがいになる。そして、アンネローゼの苦しむ顔を見たいあまり、弟であるラインハルトの暗殺をも謀ろうとする。

例を挙げると、次の2つがある。

  • 惑星カプチェランカで、基地司令官へルダー大佐に、初陣に挑んだラインハルトを謀殺させようとした(外伝「自銀の谷」)。
  • 第五次イゼルローン要塞攻防戦の最中、クルムバッハ少佐に命じてラインハルトの謀殺を図った(外伝「黄金の翼」)。

そして、シュザンナはついに直接的行動に出る。「女優退場」のエピソードだ。

OVA版では、アンネローゼを言葉巧みに誘拐して毒殺し、見知らぬ村の男と偽装心中させて辱めようとした。

一方、原作版では、国立劇場でのピアノ演奏コンクールを鑑賞した帰路の出来事として描かれている。(*1)

ラインハルトとキルヒアイスが1台目の車に乗り、もう1台にアンネローゼとその友人であるヴェストパーレ男爵夫人、シャフハウゼン子爵夫人が乗っていた。

そこを対戦車ライフルで攻撃される。だが、ロイエンタールとミッターマイヤーが加勢に駆けつけ犯人を捕らえて、ベーネミュンデ侯爵夫人の仕業であることを自供させた。

いずれにせよ、彼女の暗い情熱に彩られた陰謀は失敗し、宮廷警察から自裁を命ぜられてしまう。「女の嫉妬は恐ろしい」という安易なくくり方は自重したいが、復讐心に猛り狂った彼女をみると、人間の情念は時としてホラー映画よりも恐ろしいのかもしれない。

(*1) なお原作版では、帝位継承権を排除したいブラウンシュヴァイク公が、シュザンナの産んだ赤子を殺害した疑いが濃厚とされており、この辺りも含めてあまりアニメ向きではない、生々しい印象となっている。

2・フレーゲル男爵

この人はたぶん『銀英伝』キャラの中でも一番嫌われているのではないだろうか。

正確は尊大・倣慢で、髪形もダサいし、目付きも悪いし、美点がまったくといっていいほどない。卑怯・陰湿・狡猾という言葉を絵に描いたような人物である。

フレーゲル男爵の弄した陰謀の例を挙げよう。

  • 獄中のミッターマイヤーを謀殺しようとした。
  • アスターテ会戦をラインハルトの敗北に終わらせるため、フェザーンを通じて艦隊編成の情報が同盟に流れるようにした。(*2)
  • シュザンナに協力して、手下を使いアンネローゼを拉致して殺害しようした。その後には証拠隠滅のためにシュザンナ本人も消すつもりだった。(*3)

たが、最後には彼も破滅する。リップシュタット戦役で軍事的に大敗を喫したにもかかわらず、その現実を受け入れることができず、あげくに「一騎打ち」の「滅びの美学の完成」だのといった“寝言”を言った末、部下に射殺された。

考えてみれば、彼もまた哀れな人物として描かれている。

(*2) 劇場版『新なる戦いの序曲』オリジナルエピソード。

(*3) OVAオリジナルエピソード

3・ブラウンシュヴァイク公爵

特権階級のもつ差別意識を凝縮したような人物である。

公爵の陰謀は次のようなものだ。

  • 甥のフレーゲル男爵と協力して、ラインハルトをアスターテ会戦で敗北させるべく、情報をフェザーンに流した。(*2)
  • 自己の権力欲のため、リッテンハイム侯らと協力して反皇帝派リップシュタット盟約を結成し、また卓越した用兵家であるメルカッツを自分に協力させるために脅迫した。

このブラウンシュヴァイク公爵は、ヴェスターラントの核攻撃を命じて、二百万人もの民衆を虐殺した張本人として、傲慢・不遜な帝国大貴族の象徴的人物であったわけだが、彼の死と共に、ゴールデンバウム体制も事実上、倒れた。

メルカッツも看破したように、「特権は人の精神を腐敗させる」のだ。

そのことを証明してみせたのが、彼ら帝国大賞族であろう。

生まれ育った環境のせいで、このような人間になってしまったことを考慮すれば、彼らもまたある意味で“犠牲者”なのかもしれない・・・。

陰謀と詐術と悪徳の世界――負と暗黒の人間像

その他キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-369

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