名副官列伝【銀英伝キャラ】
ある集団・組織の中でリーダーがいれば、その補佐役に徹する人も必ずいる。
そもそも副官には、リーダーの総合的な戦略・方針面の決定にまで関与できる参謀タイプと、あくまで実施面の遂行に限定されるタイプの2種類がいる。
考えてみれば、この点でも、帝国と同盟の格差は激しかった。
ラインハルトは実にたくさんの前者タイプの補佐役に恵まれていたといえる。キルヒアイス、ヒルダ、オーベルシュタインなど、有能な副官がキラ星のごとく揃っている。
だが、対するヤンは、彼の思考や行動に真に影響を与えうるような側近に恵まれていなかった。たしかにフレデリカは優秀な副官だし、ムライやフィッシャーも艦隊運営に欠かせない人材だが、こと戦略に関する限り、ヤンはいつも孤独であった。
どうやら、こういった点でもヤンはハンデを背負っていたようだ。
さて、それはともかくとして、物語には優れた手腕を発揮する補佐役たちがたくさん登場する。以下、取り上げてみよう。
1・アントン・フェルナー(→オーベルシュタィン)
彼の場合、まずその神経の図太さが長所に挙げられる。ラインハルトの暗殺をブラウンシュヴァイク公に進言して怒鳴りつけられるが、少しも萎縮せず、自ら部下を率いて暗殺の実行に乗り出す。そして、それが失敗に終わると、今度は公を見限ってラインハルトに自分を売り込みにいく・・・。まったく悪びれるところがない。
結局、仕事の鬼であるオーベルシュタインの下に落ち着き、たちまち有能な副官へと変貌を遂げる。あの通り、上官が極度に寡黙かつ秘密主義なので、フェルナーが常にその真意を推測しなければならない点が面白く、またその過程がオーベルシュタインの内心を言語化する役割を担っている。
おそらく、フェルナーのように図太い神経をもった自信家でないと、オーベルシュタインのような人物の副官はまず務まらないだろう。
フェルナー語録
「忠誠心などというものは、その価値の分かる人に捧げてこそ意味のあるもので、人をみる目のない主君に忠誠を尽くすなど、宝石を泥の中に放りこむようなものです」(OVA18話)
2・アルツール・フォン・シュトライト(→ラインハルト)
帝国全体の国益を考えて内戦にのぞむブラウンシュヴァイク公を諫めるなど、良識家である。無理解な上司の下から脱した後は、ラインハルトに資質を見出されて首席副官に引き抜かれる。ラインハルトが「バーミリオン会戦」で脱出を意固地に拒んだ時や、「キュンメル事件」で男爵の要求に頑として妥協しなかった時などは、側近の義務として諫言した。決してイエスマンに陥らず、副官としての責務の何たるかを知っている人物である。
3・チュン・ウー・チェン(→ビュコック)
帝国軍がフェザーン回廊から侵攻してきた後の宇宙暦799年に、病に倒れた宇宙艦隊総参謀長の後任として現れたのがチェンである。
彼はそれなりの戦略家だ。ヤンに対して自由裁量権を与えることを提案してイゼルローン要塞を放棄させたり、バーラトの和約違反後の帝国軍の再侵攻に際して、5千隻以上もの艦隊を譲渡したりと、大局的見地から優れた決断を下している。
そして、上官のビュコックに対しては、完璧な補佐役を演じた。
ランテマリオ会戦ではビュコックの自殺を独特の論法で思い止どまらせ、またマル・アデッタ星域会戦では、共に威厳をもって民主主義に殉じた。
チュン・ウー・チェン語録
「民主主義に乾杯!」(OVA 72話)
4・カスパー・リンツ(→シェーンコップ)
シェーンコップがローゼンリッター連隊の小隊長であった頃から、忠実な右腕として白兵戦の数々を共にしてきた。
武に長けているだけでなく、絵画や歌などの芸術方面の才能もあるようだ。(*)
シェーンコップがイゼルローンの要塞防御司令官に就任した後釜をうけて、第14代のローゼンリッター連隊長に就任。他のヤン艦隊の幹部たちのような毒舌や軽口とは無縁の重厚な性格だが、忠誠心には厚く、白兵戦においては当然有能である。
シェーンコップにしてみれば、これほど安心して背中を任せられる部下も他にいないに違いない。
(*) いずれ個展を開きたいそうで、ユリアンは「カスパー・リンツ 画伯第1回個展入場券ナンバー1」という、手製カードを持っている。
「画才だけにとどまらず、歌でも彼は連隊一の名手なのである」(外伝3巻)
5・その他の人物まとめて
前項で取り上げた人物として、ブラウンシュヴァイク公の副官アンスバッハ、メルカッツの副官シュナイダー、ロイエンタールの副官ベルゲングリューンなども、当然ながらここの列に加えることができるだろう。
また、抜群の記憶力で事務処理に腕をふるうフレデリカや、艦隊運用の名人フィッシャー、会議でわざと常識論を提示するムライ、皆の元気づけ役パトリチェフなども、それぞれに優秀なヤンの副官であるに違いない。
また、ラインハルト部下のキルヒアイス、ヒルダ、オーベルシュタインなども、独立して才能を発揮できる人物であると同時に、主君の頼もしい副官でもあろう。
名脇役たちこそ陰の主役なり――キャラクター勝手に分類学
その他キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-369
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