同盟政治家列伝(前編)【銀英伝キャラ】
自由惑星同盟には「政治家」という職業がある。
原理上、公益の充実化をはかるために市民から徴収した税金を公正かつ有効利用することを委託されているに過ぎない「市民の従者」なのだが、時々、世襲が続いたりして、自分が特別な人間だと錯覚してしまいがちな人々のことである。
「猿は木から落ちても猿だが、政治家は選挙に落ちればただの人」
そんな言葉がある。
自由惑星同盟の政治家諸氏もそれを証明している方々なのかもしれない。
ここでは、そういった人々をまとめて取り上げてみよう。
1・ジョアン・レベロ
当初「帝国領侵攻」に反対したこともから分かるように、彼は同盟の政治家としてはバランスが取れていて、それなりの良識派だった。そして、同盟が戦争に敗北した後に国家元首代行、次に議長に就任したのも、あくまで責任感からだった。
だが、同盟完全併呑の口実を帝国に与えてはならないと思うあまり、彼は本来自分の流儀ではない「ヤンの謀殺」などという権力悪に関わる羽目になってしまう。
レベロはおそらく「不運」だったのだろう。たとえば、彼が最高権力者になった時期や、またオリベイラなどの政権ブレーンなども、最悪の選択だったと考えられる。]
彼が過労と苦悩のあまり廃人のようになってしまったのも、ひときわ強い責任感が彼を精神的に追い詰めてしまったからに他ならない。あげくに、彼を売って帝国の歓心を買おうとしたロックウェルたちに殺されてしまうという悲惨な末路だ。
彼自身の意志ではどうしようもない急激な時代の変化に翻弄され、不本意な政治家人生を歩むことになってしまった、ある意味、同情に値するキャラである。
レベロ語録
「誰かが国内をまとめて弁務官に介入させる口実を与えず、同盟の自主性を守っていかねばならないんだ」(OVA54話)
2・ネグロポンティ
トリューニヒトが退いた国防委員長ポストの後釜。
この人のデビューはヤンを精神的リンチにかけた査問会である。(*)
ネグロポンティはその席上、終始ヤンを居丈高にいびり抜いた。
だが、帝国軍がイゼルローン要塞に侵攻してきたと知るや、ヤンをハイネセンに呼び付けて裁判ゴッコに興じていた自らの非は棚上げにして、国防委員長の権威を傘に、ヤンに反撃を命令する。その一方で、査問会のことを外部にもらさぬよう、ヤン一行の前で平蜘蛛のようにはいつくばって頼んでみせた。
この豹変ぶり、見事な主下座ぶり(*)をみると、この人もタダ者ではない。
ビュッコック司令から「厚顔無恥の生きた見本」と評されたのも納得か。
(*) ヤンに政治的な野心があると、トリーニヒトらがフェザーンから吹きこまれたのが事の発端。ヤンが政界に進出した時には脅威・邪魔者となるため、その芽を摘むためにも発案された。
(*) 土下座シーンはOVA版のオリジナル。
3・ウォルター・アイランズ
右の件でとりあえず引責辞任することになったネグロポンティの後釜を継いだ、自他共に認める「三流の政治業者」。
だが、同盟が国家存亡の瀬戸際に立たされるや、突如として政治家としての使命に目覚め、政府の方針を決定する閣議をリードするようになる。
この辺りには「人間の奥深さ」を描く「銀英伝」の真髄があらわれている。
首都星ハイネセンに迫った帝国軍から降伏勧告をうけた時は、降伏しようとするトリューニヒトに反旗を翻した。だが、その場で、彼に過去の恥部を次々と暴露されて、低次元な喜劇が民主国家の最後の瞬間に演じられたのであった。
名脇役たちこそ陰の主役なり――キャラクター勝手に分類学
その他キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-369
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