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ラインハルトの性格を分析する

帝国キャラ編

「皇帝のひととなり、戦いを嗜む」(*1)という評があるように、ラインハルトの性質を成す最大の特徴のひとつは、彼が「戦い」に対峙した時に現われている。

「戦っているとき、自分の生が充実していると信じこむことができるのだった」(第6巻)

「敵が存在し、その敵が強大であればあるほど、ラインハルトは感情の灼熱と理性の冷徹 とを、ともに限界まできわめることができた」(第9巻)

なぜラインハルトにとって、戦うことが生きることそのものになってしまったのだろうか。冒険を好み、不可能と思えることに挑戦して克服することに生の充実を見い出す彼の生来の気質もあるだろうが、やはり後天的な原因がもっともたるものだろう。

すなわち、愛する姉を奪った者がもっとも強大な権力者であったということ。つまり、ラインハルトの「敵」が、全力を賭して戦わねばならない相手だったということである。

彼は至尊の地位を目指す過程で、無数の敵を倒さねばならなかった。彼の全身に「生きるとは戦うこと」という概念が、細胞レベルにまで刷りこまれても不思議ではない。

ラインハルト自身は、「自分は流血を好むのではない、堂々たる意志と智略の衝突こそ好むのだ」(第6巻)と考えている。

とくに親友のキルヒアイスが亡くなってからは、 満たされぬ胸の渇きを覚え、益々、戦うことでその空虚感を埋め合わせようとしたようだ。

ラインハルトは、「玉座についてわずかな日数を経験しただけであるのに、彼は荘重な安定を息苦しいものと感じはじめていた」(第6巻)という。

彼は戦っていなければ、生の充実を実感することができない人間なのだ。

ラインハルトの人格の最大の特徴が、以上のような「戦いを異常なほど好む性質」ではないだろうか。

一方、これ以外にも、彼はいろいろと単純ならざる内面性を持っている。ラインハルトという人物をみる時、史上最大の覇者であるにも関わらず、ごく日常的なレベルの人間的な優しさ(*2)や良心が確固として存在していることに驚かされる。

たとえば、ラインハルトが独裁権をえた後、宮廷のリストラが行われたが、年老いた者たちは残された。なぜなら、老齢の侍従や女官は、何十年もの歳月を宮廷内ですごし、いまさら外の世界では生きていけない者が大部分だからと、ラインハルトが考えたからである。

彼は弱者に甘んじているだけの怠情な人間は嫌うが、本質的な社会的弱者に対しては、ことのほか強い同情を示すのだ。

また、彼が下した内政上の決定に次のようなものがあった。

「退役将兵、とくに傷病者に対する年金の増額。戦死者の遺族に対する育英制度の強化。犯罪被害者に対する政府からの拠出金制度の創設」(第8巻)

このような政策も、ラインハルトが戦いを続ける一方で、その膨大な戦死者の存在を忘れず、心を痛めていたがゆえに決定されたのではないだろうか。

そして、これは何も自軍に限ったことではない。同盟を滅亡せしめた「冬バラ園の勅令」(*3)でも、「たとえ帝国軍の敵として戦った者でも、同盟軍の戦死者の遺族および傷病兵に対しては、これを厚く遇するであろう」(OVA73話)とわざわざ断っているのだ。

さらに彼の強い良心を感じさせるエピソードも多い。

ラインハルトは、フェザーンの策略に乗じて幼帝誘拐を黙認した時、ノイエサンスーシの警護を担当しているモルト中将の命運のことを気に病んだ。

案の定、彼は責任をとって自決したが、このような一部下の死に対しても強い自責の念にかられている。

ラインハルトは、時には他人を軽蔑し、冷たい仕打ちも行うが、根底には人間に対する優しさが秘められているのだ。たとえ表面には表れなくても。

また、彼の罪悪感を終生、苛みつづけた事件として「ヴェスターラント虐殺の黙認」が挙げられる。

ラインハルトは、戦没者墓地の完工式で、ヴェスターラント出身の男から強烈に指弾されると、見るも無惨な精神的ダメージを受けている。

史上最大の覇者も、内在する彼自身の良心の痛みには、打ちのめされてしまうのだ。

そして、この出来事がきっか けで、ヒルダと1夜を過ごすことになってしまうと、今度は別の自責の念にかられた。結婚することもなく逝った親友と、1夜を共にしたヒルダに対して。

このような「良心」や「優しさ」を持つからこそ、たとえそれが覇者として弱点であろうとも、彼の人間性に対して共感することができるのである。

*1・もっともロイエンタールの考えでは、「あれは嗜むというものではなく、黄金の髪の戦士が生きつづけるための不可欠の栄養素ですらあるようだ」(第8巻) という。

*2・オーベルシュタインは「覇者に私情は禁物である」と考えた。彼はラインハルトを私的感情のない「公益実現装置」に仕立てたかったので、この点を忌避していたようだ。

*3・「冬バラ園の勅令」宇宙暦800年、新帝国暦2年2月20日、自由惑星同盟273年の歴史に幕を下ろしたカイザー・ラインハルトの布告。

ラインハルトと帝国軍の諸将たち――名提督列伝

帝国キャラ編目次 http://anime-gineiden.com/page-63

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