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【銀英伝】皇帝ルドルフの独裁政治【歴史ネタ】

歴史ネタ編

さて、「人類統一政体における最初の専制君主」となった皇帝ルドルフは、当初は強力な指導力で綱紀を粛正したものの、次第に民衆に牙をむけ始める。

そのはじまりが、適者生存・優勝劣敗の社会ダーウィニズム(*1)を全肯定した、帝国暦9年発布の「劣悪遺伝子排除法」である。

具体的な施策としては、身体障害者や貧困層に対する断種の強制、精神障害者の安楽死、弱者救済の社会政策の全廃などであるという。

これこそ、まさにナチスに特徴的な所業であろう。

ヒトラーは政権を握った33年のその年に通称「断種法」(*2)を成立させている。

なぜなら、精神的・肉体的に障害をもつ人が子孫を残せば、「民族の劣等化・弱体化」につながるなどと考えたからである。

第2次世界大戦前夜までに断種を強制された人は、約37万人と伝えられている。

その対象は、知的障害者や精神障害者、結核患者、重度障害者、はてはアル中患者やてんかん患者までをも含む。そして病院の施設で「安楽死」させられた人は20万人以上に及ぶという。

ただ、優生思想そのものはドイツだけでなく、戦前の西欧やアメリカでも一種の流行であったらしい。アメリカでさえ戦前戦後を通じて断種された障害者は6万人を超えるという。

しかし、ナチスのそれは他と比較してはるかにエキセントリックだった。ユダヤ人や“ジプシー”などの抹殺、そしてスラブ民族の奴隷化計画にまで暴走していくのだ。

さて、独裁政治につきものなのが反体制者への苛烈な弾圧である。

銀河帝国で政治犯や思想犯を取り締まったのが、内務省の「社会秩序維持局」だ。そして恐怖政治につきものなのが「密告」である。

「開祖ルドルフ大帝は、共和主義者を摘発するため密告を奨励した」(外伝1巻)

という。この分野において伝統的に深出しているのがロシアである。

16世紀、モスクワ大公国のイヴァン雷帝(*3)――そういえば銀河帝国の歴史家はルドルフの怒号を「雷」にたとえているという――国内の秩序維持のため「オプリチニキ」と呼ばれた秘密警察を設置し、恐怖政治をしいた。これは後のロマノフ王朝にも引き継がれ、ロシア社会に「密告スパイ文化」とでも称すべき罪科を定着させてしまう。

1917年のロシア革命以降も、発足まもない共産党政権はチェカという秘密警察を設立し、反革命分子を取り締まった。

そして22年、スターリン(*4)の書記長就任後は、悪名高きGPU(*5)に昇格。

スターリンは独裁者と化し、党員や軍部、市民の大粛正を行った。その人数は「最低1千万」という人もいれば、「2千万超」との説をとなえる人もいる。

ルドルフは国民の1・3パーセント(40億人)を粛正したそうだが、比率的にいえばスターリンの方が酷いということができる。

ところで、秘密警察といえば、すぐにナチスのゲシュタポ(*6)を思い出してしまうが、これは発足当初こそ政治犯(主に左翼勢力)の摘発に力を注いだものの、その後はユダヤ人狩りなどに主力があてられた。つまり、摘発の対象が主に他民族なのである。

そもそも、ヒトラーは国民の自由は統制したものの、福祉の向上には熱心に取り組んだくらいなのだ。彼は彼の定義する「普通のドイツ人」には優しかった。

ルドルフの「社会秩序維持局」が、あくまで自国民に惨い仕打ちをしたという点を考えると、ナチスのゲシュタポよりも、ソ連のGPUとの類似性の方が強いといえる(個人崇拝を国民に強要した点でも、ルドルフ・スターリン両者は似ていよう)。

また、アーレ・ハイネセンらの共和主義者たちが極寒の惑星で流刑にされていたというエピソードも、ソルジェニーツィン(*7)『収容所群島』を思い出させる。

このように、ルドルフが行った政治は、規模こそ小さいが、決して人類の歴史に例がないというわけではないのだ。

(*1) ダーウィニズム一般の場合、『種の起源』を記したダーウィン(1809~82年)の学説全体を指す場合と、その中の「自然陶汰説」を指す場合がある。この後者の考えを社会科学に適用したもの。

(*2) 正式には「遺伝疾患者たる子孫を防止するための法」。ユダヤ人の絶滅政策にも応用された。

(*3) 在1533~84年。イヴァン4世。専制と農奴制を強化した。

(*4) 1879~1953年。ボルシェビキとして革命に参加。レーニン亡き後、対立者のトロツキーを追放して、36年には独裁を確立した。

(*5)国家政治保安部の略。後にKGBに進化した。

(*6)第三帝国の秘密国家警察。ゲーリングが創設し、親衛隊長ヒムラーの指揮下におかれた。後に帝国保安本部の第4局(局長ミュラー)となり、「国家の敵」に対する拷問などを行った。

(*7) 1918年生まれ。スターリンを暗に批判したため、8年間の強制労働の刑をうける。その後自らの体験を基に作家活動を行い、70年にノーベル文学賞を受賞する。革命後のソ連の民衆弾圧の歴史を綴った「収容所群 島」を発表すると、国外追放された。

「銀英伝」には歴史が満ちている――気ままに歴史ネタ探求

歴史ネタ編目次 http://anime-gineiden.com/page-890

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